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No.2 「ご苦労様」と「お疲れ様」の間に

先日、街中を歩いていたときのこと。少々顔見知りの年配の方が、ボランティアで街の美化活動の一環として清掃をされていました。目が合ったとき、まだ午前中でしたので「おはようございます」の挨拶はしましたが、それに続く言葉が出て来なく、一瞬の沈黙の後、そのまま分かれてしまいました。

なぜなら、このとき自分の頭の中で「ご苦労様」「お疲れ様」のどちらを使用してよいものかで、かなりな葛藤があったのです。

日本語に関心のある方などはご存知のことかと思いますが、「ご苦労様」は目上の人が目下のものの労をねぎらうための言葉であるため、目下の者が目上の者に使用することは、失礼にあたります。上記のような場合、知り合いの年配の方であったため、もちろん「ご苦労様」は、使用できません。

しかし「お疲れ様」がいいか?というと疑問が残ります。「お疲れ様」は、どちらかといえば仲間内で使用されるような感じがあるからです。会社内やグループ内で互いの労をねぎらうといった感じがする言葉だと思いますので、上記のような場合、自分はその人と同じグループにいるわけでもなく、一緒に街の清掃活動をしているわけでもなく、ただの通りすがりの知り合いに過ぎません。

このような場合、皆さんならばどんな言葉をかけますか?

周りの人に聞いた結果、一番多かったのは「大変ですね」の後に、たとえば「お体に気をつけて」などのいたわりの言葉をかけるというパターンでした。

一瞬「なるほど!!」と思いましたが、よく考えてみるとこの「大変ですね」も曲者です。言い方やシチュエーションによっては、マイナスの印象を与えることもあるからです。このように考えてみると、言葉は、言葉そのものだけでなく、使用時の状況や場面、声の高低・強弱、言い回し、表情などいろいろな付属品とともに、使う人の心を如実に表現するものだと思います。

あぁ、それにしてもちょうどよい言葉がないものか、気になります。


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